日本一のキスをしよう~太陽のような笑顔に魅了されて~
P.M14:00
くろのは休日の昼下がり渋谷センター街にいた.
とにかく暑い.
5月も後半,いよいよ夏がやってくる.
眩しい太陽に照らされながらストリートナンパを始める.
さあ,今日はどんな美女に出会えるだろうか?
オープナーはどうしようか?全く思いつかない.
でも,もし少しでも笑わせられたら,
"お姉さんの笑顔はこの太陽より眩しいですね"
うん,今日はこんな感じのイメージで行こう.
一緒に街に出ていた雷電さんとお互いソロで声かけを始める.
彼は一歩目が早い.
最近はいつも雷電さんが先に声かけをしてどこかに行ってしまうケースが多い.
でも,焦らない.
自分のペースでやる.
自信を持って,余裕を持って,男気のある態度で.
声かけをすすめる.
さすが渋谷というだけあって人の数の多さは地方より桁が違う.
でも声かけ数は稼げるがその分反応はイマイチ.
めげずに声かけしよう.
10人ほど声かけをした後,再び雷電さんと落ち合う.
地蔵トークをしていると,井の頭通りにて,目の前から一人の女性が歩いてくる.
昼間の渋谷,人ごみの中で彼女と出会った
見た目は少し強めなギャル.
色白,明るい茶髪,胸元が強調された肩出しトップスに黒いレザー.
文句なし,僕のタイプの女性だ.
声をかけない理由が見当たらなかった.
雷電さんに
"あの子声かけに行きます"
と言って正面から声かけに行く.
「よっ!今日暑くない??」
「うん,あつーい」
「ね!今はお買いもの中?」
「友達を待ってるの!まだホテルで寝てるみたいだけど...」
「ん?どうゆうこと?」
「昨日友達と二人で渋谷のホテルで女子会してたの.それでまだ友達が寝てるからお買いものしてぶらぶらしてた!」
「なるほどね.あ,もしかして煙草吸う?」
「うん.」
「じゃあ,その辺で一本吸おう!」
5mほどの平行トークからのビタ止め.
彼女が煙草を咥えると同時にライターを取り出す僕.
はい,どうぞ.
火をつけてあげる.
ありがとう,どういたしまして.
美女が煙草を吸う姿はいつ見ても絵になる.
「おれいくつに見える??」
「んー,24歳??」
「少し老けて見られた...」
「え!ごめんごめん.20歳ぐらい?」
「22歳やで!」
「今年23?」
「うん,せやで!」
「あ,じゃあ一緒だ!w」
「ほんまに??ほなおれらゆとり世代やな!w」
「よし,何の仕事やってるか当てたるわ!」
「うん.当ててみて!」
「自販機の"あったかーい"と"つめたーい"を季節ごとに入れ替える仕事!今が変え時やろ?」
「なにそれーww,でもやってみたいかもw」
強めの見た目とは裏腹によく笑う女の子.
そうだよね.
いくら見た目の印象が強くても中身は普通の女の子だもんね.
話しかけて良かった.
後から分かった事ではあるが,仕事はBarの経営関係に携わってる女性.
つい最近まではキャバ嬢をやっていたらしい.
僕の好きな夜蝶である.
真昼間の街でも夜系の女性を引き当てる運の良さはいったいどこから来るのだろうか?
自分が引き寄せているのだろうか?
「じゃあ,友達が起きるまでその辺適当にお散歩でもしよっか!」
「うん,いーよ!」
「夜からこの辺で飲み会あるからそんなに長くは一緒におれへんけど友達が起きるまでの少しの時間おれの暇つぶしに付き合ってw」
「はいはいw」
「ありがとう」
てことでお散歩スタートするも,
やっぱ暑いじゃんね?カラオケあるしここで待とう.
という流れで...
カラオケイン!
ドアを開けて先に部屋に招く.
レディファーストを忘れずに.
照明は雰囲気作りのため真っ暗に.
クーラーで室内温度を調整.
飲み物を聞いて,"オレンジジュース",はいすぐに持ってきます.
外から見て部屋がどう見えるかを確認.
うん,暗くて室内は見えない.ばっちり.
連れ出しのツイート.
全てがいつもこの流れ.
勇気を出して僕についてきてくれてありがとう.
さあ,準備は整った.
始めるぜ?
相手はシラフ.
でもそんなの関係ない.
魅了させてみせる.
L字のソファー.
まずは別々に座る.
でも目線は彼女にしっかり向ける.
彼女が煙草を吸うタイミングでは毎回火をつけてあげる.
まるでホストになったような感覚.
くろのの顔はお世辞にもホスト向けとは言えない.
うん,完全に思いあがりである.
"勘違い野郎"
歴代の元カノにはいつもそう言われてきた...
まずは仕事の話.
適当なタイミングで相槌を打つ.
ところどころ気を利かした洒落で笑いを作る.
一生懸命に仕事の話をする彼女を認めてあげる.
これでもかってくらい大きな心で包み込んであげるイメージ.
まるで太陽のように眩しい笑顔.
こちら側がじっと見つめると恥ずかしそうに照れる仕草.
実に綺麗である.
くろのはすぐに彼女に魅了された.
次に恋愛の話.
彼氏は1年ほどいないらしい.
というか彼氏は今欲しくないそう.
でも彼氏のいない間はなにかしらあったみたいで,不倫の経験もあり.
うん,いいね.
僕は不倫相手になる女性になぜか魅力を感じる.
最短距離で彼女を抱きたい
素直にそう思った.
話の途中で無言になり彼女を見つめると恥ずかしそう.
でもこれはきっとくろのの顔に見惚れているわけではなくて,
単純に人に見つめられると恥ずかしいからだ.
あれ?今日のメイクおかしいのかな?
顔になんかついてる?
髪型変かな?
そんな感じで少しの不安を与える.
実際のところはただ僕が彼女に見惚れているだけなんだけどね.
結局のところ,最終的に恥ずかしいって思わせられたら良いような気もする.
女心をくすぐる.
彼女の手は少しふっくらとしていて可愛らしかった.
ここから少しずつ距離を詰めよう.
「手可愛いな!赤ちゃんみたい!」
「ちょ,それ気にしてるのー!」
「ええやん.可愛らしくて綺麗な手してると思うで!」
「あんまり見ないで//」
そっと手に触れる.
彼女の手は柔らかくて,爪が綺麗で,なによりあったかかった.
気がつけばL字のソファーで別れて座っていたはずが隣同士で座る.
頭をなでる.
照れる.
可愛い.
「電車乗ったりするやろ?」
「うん,乗るよ!」
「もしさ,隣に座ってる人がめっちゃ眠そうにしててウトウトしながらこんな風にもたれてきたらいつもどうしてるん?」
二人の距離が一気に近づく.
とっさに思いついたクロージングの仕方ではあったが自然な流れで密着できる良いルーティーンかもしれない.
名付けて...
"電車ウトウトルーティーン"
これからも使おう.
「え,そんなのこうやって払うよ」
「意外と優しいな」
「それは今隣がくろの君だからだよっ!」
「え?そう?じゃあ,逆におれにもたれてきてや!」
もたれる彼女.
肩に腕をまわして優しく抱きよせる.
さっきまで二人でゲラゲラ笑い合っていた時間とは逆に少しの静寂が訪れる...
大きな静寂が訪れてしまう前に...
静けさから二人で逃げるように...
キス
優しく,ゆっくりと.
愛をこめてキスを.
接吻後,開口一番に彼女はこう言った.
「なんでこんなにキス上手いの??//」
「なんでやろな...」
それならば...
「今日は,渋谷で..いや日本で一番のキスを二人でしようよ!」
「うん!」
一生,人生,瞬間,何かのワンシーン.
これは恋愛のワンシーン.
二人で愛し合う.
出会って間もない二人.
きっと声をかけなければ出会うことのなかった二人.
でもこうして出会ったことを"運命"だと思わずにはいられなかった.
ただ,ひとつ.
カラオケなんかでごめん.
次会う機会があるならばちゃんとしたところで君を抱くよ.
カラオケには2時間の予定で入室した.
ちょうど1時間で彼女を即り,残った1時間は二人でくだらない話をいっぱいした.
思い出す事のできないほど他愛もない話をたくさんした.
そしてこれでもかってくらいキスをした.
日本一になるには数を踏まないと.
質は量から生まれる.
キスに対して何言ってんだ...
全く自分でも呆れる.
「初めて会った気がしないね」
「うん,すごい話しやすい人!初対面の人とこんな風に話すことなんて普通はないよ」
「もしかしたら夢で逢ってたかもね」
P.M17:00
二人は解散して別々の道に向かった.
出会って約2時間.
僕はまるで素敵な映画を一本観たような気がした.